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汝、鷹の爪を継がんとせし人ならば、真に刻んだ志を示せ。 汝、鷹の羽を宿さんとせし人ならば、誠に猛る理想を示せ。 証明せよ。汝、雛鳥に非ず。頂上たる蒼穹を翔べ。
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【TIPS】天良家花室之遺書(第一次極東戦争時)

※作品として挙がってないよクオリティなのでTIPS(読み物)として一時保存。
 大花院が意地を張っていたせいで、ついには蓮が姿を消すまで誰にも読まれなかった遺書。




前略

 この遺書が読まれているということは、私は既にあなたの許から飛び起った後ということなのでしょう。
 誰かが悲しんで泣いてくれたとしたら、それは身勝手だけども、私にとってとても嬉しいことです。
 でも、私が起ったことをどうか嘆かないで。
 小さなお墓で構わない。私の名前がそこに刻まれていて、一年のうち、たった一日くらい。それくらいだけ、誰かが悼んでくれたら、私はそれだけで良いのです。
 名前。そう、あなたと出会ったとき、私はずっと傍らに咲く花を摘み続けていましたね。ぷつり、ぷつり、って。
 私自身の名前にも、他人の名前なんかにも、興味はないと嘘を吐いていたけれど、本当は私の音を聞いていたのです。華の音と書いて華音。でも華から音なんて聞こえない。じゃあ、私の名前は一体何の意味を持つのだろうとずっと思っていました。私の耳に届いていたあの花が千切られる悲鳴のようなか細い音は、そのまま私自身のことを指すのではないかとずっと怯えていた弱い私でありました。あの童女の私でも容易く手折ってしまえるような、脆く、ちっぽけな華が天良の姫であることの証のように思えて、ずっとずっと自分の名前が大嫌いでした。
 でも、私はあなたの名前を知りました。あなたは私と同じ、花の名前を持っていたけれど、私と同じではありませんでした。私は初めて泥に沈んでしまっても、誰かに手折られてしまっても、根を張り巡らして花を咲かせる華を知りました。そしてそれ以上に蒼穹を飛ぶ大きな鳥の姿に焦がれました。
 あなたが鷹として立ったとき、皆は私が副隊長にと推してくれました。けれど、私は断りました。私はあの鷹の群れのその前を、一番先を、あなたを守りながら飛んでいたかった。どうせ散ってしまう命なら、童女の手で摘んでしまえるか弱い華よりも、生え変わって増々精悍な鷹雛の羽根の一枚として堕ちたかったのです。
 これが誰かの目に触れているのなら、それはきっと私の本望が叶ったということでしょう。
 これを読んでいるのがあなたなら、あなたのあるがままに高く高く、国境の向こう側まで飛んでゆける鳥になられんことを。
 これを読んでいるのがもし、別の誰かならば鷹と呼ばれたあの人に天良華音は望んだままに飛べた、幸福な一羽であったことを伝えてください。
 そしてせめて、一年に一度、蓮華の花の咲く頃に、少しだけ私のことを思い出してくれたら、私はそれだけで幸福です。

 手のひらから零れてしまいそうな、たくさんの思い出と幸福をありがとう。


                                           草々


「花と羽根 ひとしく命 ながからぬ 羽根と散るのを 思ひけるかな」 華姫
(季節によって散る花と、生え変わっていく羽根と、等しく短い命であるならば、私は羽根となって散りたいと思うのです。(そう思うことは罪でしょうか))

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