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汝、鷹の爪を継がんとせし人ならば、真に刻んだ志を示せ。 汝、鷹の羽を宿さんとせし人ならば、誠に猛る理想を示せ。 証明せよ。汝、雛鳥に非ず。頂上たる蒼穹を翔べ。
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華歌残照 肆

*注意事項*
・身体的にも精神的にも18歳未満の閲覧を禁止させていただきます。
・双月世界で書いたR-18の中では一番綺麗でぬるいです。
・ヒーローは基本、ヘタレです。師匠に選んではいけません。
・ツンデレが決壊してだだ漏れどころか堤防決壊してますが、別に誰かに操られてるとか、実は別人とかいうオチはありません。
・ヒロインが男前の理性ブレイカーなのは仕様です。
・背後に注意しながらお読みください。


※次でラストになります。


 英雄色を好むという言葉がある。
 それは揶揄では無く、ただ事実を語った言葉であると、武鎧蓮は思っている。
 戦場で人を斬るという、信義と命のやり取りには、ある種の麻酔のような昂揚感が無くてはならない。一太刀一太刀を罪の意識ではなく、昂揚に取って変える為に、戦意の鼓舞は存在する。
 その戦場の昂揚感は、褥の中で女の秘処を抉る昂揚と、非常に良く似ているのである。
 だからこそ、古来の名ある武将の幾人かは、戦前の宴の中でわざと稚児や女を抱いて、士の意識を昂ぶらせた。今でも戦の前後に花街が賑わう理由は同じである。戦で昂ぶった男の気を冷ますには、女を抱くのが一番早いからだ。
 そんな英雄の称号の一部は、沙羅という国では護廷軍の長という、何とも解りやすい形で残されていた。
 つまりは。
 その“獣”の名を冠される英雄の血筋は、紛れもなく己の血の中にも存在するわけで。男としても、鷹という“獣”の名を冠された武鎧の将としても、逃れ得ないものなのである。
 花街嫌いで知られる武鎧蓮は、性欲が弱いわけでも、そちらの機能が不全なわけでもない。自らが男なのだと悟る前に、何とも綺麗で苛烈な恋心を抱いてしまったが為、異常とも言える自制心を培ってしまっただけである。
 今まで反論しなかったのは言うまでもない。論じるだけ間の抜けた話になるだけだからだ。
 ――いっそのこと、不全であった方がマシだった、と思った事があるのは、否定しないが。
 無邪気で、無垢過ぎる天女を想うのは、これでなかなかに大変なのだ。
「……?」
 などということを思い返していたら、己の身体の上によじ登った少女が小首を傾げて顔を覗き込んでいた。
 さらさらとした金の糸が、肩口から零れて胸を擽る。白い首は力を入れれば折れてしまいそうに細く、無垢だった。噛み付けば容易く千切れてしまいそうに見えた。爪を立てれば軽く抉れてしまう。少しでも強く吸い付けばおそらく赤く痕が残る。固い蕾の少女の身体は、壊そうと思えば幾らにでも壊せてしまうのだ。いつだってそれが怖かった。
 清浄の水に咲く蓮の花。しかし、その身は穢れた泥の甘美な味を知っている。
「どう、かした?」
「……いや、何でもない」
 目の前の華を摘み取って奪いたいわけではない。愛でて注いでやりたいのだ。二千年、澱に溜まった呪いの泥の淵から、華として咲かせてやりたかった。
 己の持つ鷹の爪で蹂躙したいのではない。羽根で愛しく撫でてやりたかった。一時の情愛ではない。朝になれば消えてしまう結び事ではないのだから。
 ――きみがため おしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな。
 飾り気のない詞を連ねれば、血の気に盛った欲の向こうに注いでやりたい想いが見えた。花の蜜を味わい尽くすより、共に同じだけの甘やかな蜜月を過ごしたい。
 凍えて震えた小さな拳に指を重ねて、ゆっくりと諭すように解いてやる。躊躇いがちな指先の隙間に、自分の指を滑り込ませて痛みを覚えない程度に握り込む。雨風に晒された少女の手を、いつも握っていた頃と同じように。強張っていた細い肩と眉から、少しだけ力が抜けた。
 逆の手で背中を抱いて、柔らかな唇を吸うと、慣れてきたのかちょうど良い角度に顔を傾けてきた。親に餌を強請る駒鳥にも似ている。舌で突くように柔らかに求めると、おずおずと小さな嘴が開いた。必然的に深くなった接吻に、長い睫毛が震えた。
 息が絶えないように、何度か離しては溜め息を吐かせる。回数を重ねる毎に小さな吐息は艶を増し、少女のものから女のそれへと変わっていく。
「……っふは」
 軽い音を立てて唇を解放してやると、華音は色気のない声を上げた。思わず苦笑してしまうと、好物の林檎のように染まった頬のままで睨まれた。
「……あ」
 ふと、照れながらも不機嫌に尖っていた唇が、何かに気が付いたようにへの字に曲がった。
「どうした?」
「……」
 への字からだんだんと下がって、僅かに潤んでいく眼。不思議に思い、彼女の視線の先を負う。落とした視線の先には、己の身体があった。華音が何度か腹の上で暴れた所為で、緩んだ袷から胸と腹が覗いていた。
 幼少の頃から鍛え上げた甲斐あってか、引き締まり、逞しくはなった。しかし、武将として前線で刀を奮い続けた為にお世辞にも綺麗ではない。華音が気難しげにじっ、と見つめているのは、一際目立つ真新しい腹の傷だ。胸の下から臍にかけて、裂かれたように出来た大きな傷痕。
 しまったな、と思う。隠せるようなものではないが、少し配慮するべきだった。
 それは彼の美高の奪領戦で、彼女の狂刃がつけた傷だ。急所こそ免れていたが、背中まで身体を貫いた傷は蓮の身体にまた一つ、生涯、消えない傷痕を残したのだった。
 蓮にとってはどうでも良い事だった。女の柔らかい身体ではない。そんな傷一つに、心一つ、魂一つ傷つけられるような性分ではない。この傷一つで、腕の中に彼女が帰って来たのだ。たとえ、もしもこの傷が一生に関わる病を残していたとしても、蓮は後悔一つせず目の前の少女を愛し続けただろう。
 それでも華音にとっては、身を焼く程の憂いだったらしい。伏せた面の舌で、小さく噛んだ唇と腹の薄衣を掴む手が、痛ましく戦慄いていた。
「華の……!」
 悔やむようなものじゃあない、そう伝えようと開きかけた言葉が止まる。素肌の胸と腹を、美しい金の髪がふわりと覆い尽くした。
「華音……?」
「……」
 くちり、と小さな水音がした。息を呑む。醜く歪んで爛れた傷痕に、目を伏せた少女が小さな唇を付けていた。
「……華音」
「ん……ふぅ、ぅう……」
 償いを請うように、血を吐き出した傷口を労わるように、拙い舌の動きで傷痕を追う少女の姿は無垢で、幼稚で、比べるものがない程、美しかった。傷を負った後の引き攣った感覚が、嘘のように消えていく。禍を身に受けて昇華する現人神の化身は、傷痕までも癒すのか。いや、
 ――違うな。
 これは患って十四年、蓮の胸一つに燻り続けた懸想だ。永い間に形は変えれど、一途に在り続けたその想いは、愛と呼ぶには育ち過ぎていて、恋と呼ぶにはあまりにも苛烈だった。
「華音」
「んぅ……」
「華音、もういい」
 献身的な奉仕にも似た、だが神聖にすら思える行為を優しく諌めて、蓮は今一度彼女の身体を抱きしめた。愛らしい。いと惜しい。彼女が己を慈しんでくれたように、温かに愛してやりたいと素直に思った。
 見た目よりも華奢な身体を押し潰してしまわないよう、静かに身体の位置を入れ替える。褥の上に柔らかに縫い止めた身体の一つ一つに、撫でるような口付けを落としていく。最初は額に。日の光よりも温かい滴の滲んだ瞼に。愛らしく染まった頬に。柔らかな貝殻のような耳に。唇には少しだけ深い情愛を。
「ん、ふぁ……」
 薄目を開いた華音は、逆上せたような声を上げた。そのまま甘やかに匂い立つ首筋に顔を埋める。また、あの嗅ぎ馴れない、だが確かに知っている香りが鼻につく。
「華音……」
「な、何?」
「……初夜は男を煽るものじゃない」
「?」
「幾ら俺でもな、」

「己の名と同じ花の香りくらいは、知っているんだが」

 行灯に照らされる白い肌が、ぱぁっ、と淡く桜色に染まった。ぼそぼそとした声で『あぅあぅ』と喚く声が聞こえる。これは誰かの入れ知恵か、少なくとも華音一人の案では無さそうだ。
 成婚の儀に花嫁が纏う衣装は、国を隔てても白であることが多い。民族を越えてその染まりやすい無垢な色に拘る程、男という生き物は本能的に相手を自分の色に染めたがる。独占欲の表れである。ましてや初めて足を開かせるその夜に、深く己に縁のある香りに染まった柔肌を突きつけられて、籠絡されない男がいるものか。
 ――溺れろということだな。
 歯は立てないように首筋に舌を這わせると、強張った身体がひくり、と跳ねた。握り込んだ手の力を強めてやりながら、密やかに袷を弛めて、露わになる肩と鎖骨の窪みに口付けを這わせた。
「あ……ぅ」
 するりと袷の隙間から掌を忍ばせると、閉じて震えていた唇から小さく喘ぎが漏れた。たわわに実った果実に触れれば、きつく目を閉じる。頭を撫でてやりたかったが、手が空かない。代わりに頬に羽のように軽い接吻を落とした。
 武人として鍛えられた身体に実る双丘は、遊郭で舞う遊女たちのそれよりもしなやかに掌を受け止めた。己の身体のどの箇所よりも柔らかで心地良い。華音は少しばかり不安げに眉を顰めた。
 袷が弛んだ頃から、今一つ、視線がちらちらと定まらない。ただ羞恥を堪えているだけかと思えば、そうでもないらしい。どうした、と控えめに声をかければ、俯きがちに口を開いた。
「……灯り。消さない?」
 自信無さげに言い出した言葉がそれだった。ちらちらと迷う視線は、傍で煌々と灯る行灯に向けていたものらしい。何故、今更気にし出したのか。少し逡巡して、先刻の彼女の言葉を思い出す。袷が弛んで白く露わになった胸元に目を落とすと、また不安げに目を伏せた。
 ――そういうことか。
「総て焼き付けたい、と言ったら。駄目か?」
「……あんまり、綺麗じゃないよ?」
「馬鹿を言うなと何度言わせるんだ」
「あ……」
 言い捨てて温かな谷間に顔を埋める。目立ったものこそないが、ついてしまった掠り傷の名残を覆うようにして舌で愛撫する。傷の舐め合いという言葉がある。あまり優しい意味ではない。弱者の侮蔑に使われる言葉だが、元は動物が傷を癒そうとする本能だ。舐めて癒せる傷口なら、幾らでも愛おしみたい。
 華音は抑えた声を零しながら、何度か艶のある溜め息を吐く。さらに袷を開き、裾野を撫で上げて頂を唇で包むと、一際高い声が漏れた。

「――俺にとっては、お前ほど綺麗な生き物は存在しないんだ」

 心も、身体も。純粋で、無垢で、拙くて、危うくて、放って置くことなど出来なくて。
 恋と悟った時には既に後戻りは出来ない程、大切だった。
 愛を知った頃には幼いからと言い訳をせずにはいられない程、胸に抱いて居たくて堪らなかった。
 どの花よりも愛らしくて、どの生き物よりもしなやかで、どの珠よりも傷つけ難くて、どの絹よりも艶やかだった。
 武鎧蓮にとって、天良華音は常にそんな存在であったのだ。
 一度失い、色の無い世界に突き落とされて、嫌というほど思い知らされた。賽の河原に咲く曼珠沙華の紅い色さえも、彼女を失ったこの目には慰めにならなかった。
 静かに囁いた声に言葉を失った華音は、鯉のようにはくはくと口を開いた後に、赤面したまま小さく頷いた。軽く握った拳を口元に押し当てて、何度も頷くのは、もう言わないということだろう。
 胸に空いた切ない穴が埋まる。その温もりに穏やかに微笑んで、蓮は静かに帯を解いた。



 

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御子息おめ(*´▽`*)

論説しっかり読ませていただきますた(`・ω・´)
うん。蓮くん。早く押し倒せよと思ってごめんwwwwww
かのちゃと存分いちゃいちゃしてくださいなヽ(^。^)丿

口説き文句は最高なのになぁ。事に及ぶのがおそ(ry
ご子息の悲願が成就したようです。

論説は書いてて楽しかったけれど、一方で「やかましいわwww」と煽る作者が存在しますた(笑)
この恋は冥土の淵まで美しいまま持って行く(`・ω・´)

つくづくがっつりいくタイプでなく、抱っこしながらじわじわ撫で撫でするタイプだなぁ、と思いました。本人、それが至福らしいので存分揶揄してあげてください(笑)
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