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汝、鷹の爪を継がんとせし人ならば、真に刻んだ志を示せ。 汝、鷹の羽を宿さんとせし人ならば、誠に猛る理想を示せ。 証明せよ。汝、雛鳥に非ず。頂上たる蒼穹を翔べ。
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鷹羽全章:初章【天良舞】

鷹羽全章…一代にして冷泉帝護廷十臣将『飛鷹』の礎を築いた天武家初代当主・天武蓮(享年86歳、改名以前の名は武鎧蓮)に纏わる逸話を後世にて収めたもの。祖となった武鎧家先代『鷹爪』の失脚という逆境より、一代にして名を挙げた功績から、沙羅では鷹を不死鳥と語ることもある。沙羅の変動の時代を生き残り、新しき名を今に残した武人を讃える書として、今代の武家の子の教書となっている。
 
 エセ教本の中から、第二弾。序章から天良舞(久世舞)の頂を書き出し。聖より適当になってますが、こんな感じで。
 
 
 


 
 
天良舞(てんら まい) (もしくは久世舞(くぜ まい)、舞姫とも)
(天麗十七年~不明、享年不明)
 
 鷹羽全章の中核となる天武蓮に嫁いだ天良家の姫、華姫の母に当る。沙羅国の武家に仕える女流武家の直系でありながら、伽羅国の人間と不義の子を設けたとして、一時期は天良の家系図から除名を受けていた。しかし、天良一族の後ろ旗の許、天武蓮が初代当主の座に上がると共に、その意向により再び正式な家系図に名を記すことが許された。
 母は天良華林。父は不明。(後世にて天良華林と当時の壬生家次男(天良華林の実子)壬生彰利との子と発覚)永佳年期に苛烈化、激動した沙羅国と伽羅国の対立の先駆けを担った人物の一人。武家へ仕える天良の大輪として、姫としても、武人としても名を誇ったが、末期は不遇なものだったとされる。
 
 
【幼年期】
 天良舞の幼少の頃についての記載は、多く残されてはいない。当時の天良家当主であった天良華林によって、天良家の敷地内にて隠されるように育てられていた為と思われる。記述こそ少ないが、残された書物はすべからく、彼女の容姿の美しさについて語っている。(以下、とある東国録一部抜粋)
 
「その日、皇の勅命にて参内した姫が一人いた。かの名花の一粒種である。当主の母に連れられた姫は、百合のような白肌、天上の光を束ねたような髪、晴天の空をそのまま映したかのような澄んだ瞳を持っていた。薄っすらと撫子の紅を落とした唇は、帝とその母のご意向により開くことはなかったが、その場に居た誰もが、蝶が歌うような声音を想像したことだろう。大勢の参内者に囲まれても、凛とした佇まいと可憐な存在感はまさしく美麗な一輪の花であった」
 
 他、本人直筆のものと思われる日記の一部が発見されているが、その大部分が結納の儀の前に本人の手によって焼かれたとの記載が残されている。これは当時、公に禁じられていた彼女と他家との交流が明るみに出ることを憂いた為と思われる。
 
【結納の儀】
 齢十四の年初月。幻狐軍の一部隊を束ねる当時の武家・久世家の当主との結納が発布された。一時は当時の帝の望みにより、皇族に連なる一族への嫁ぎの話も持ち上がったが、「武家に仕え、武家に種と花を残す」という天良のしきたりに反すとして破談となった。結納の発布は天良家当主天良華林にとっては不服のものだったらしく、天良家は帝へ抗議に出たが、これを諌めたのは天良舞当人であった。自ら武人として幻狐軍への入隊を志願、結納を許諾した。久世家当主とは齢にして四十近い差があったが、結納を断り続け、後宮内で母の立場が芳しくないことを察した故の行動と思われる。
 これを受けて久世家当主は都内の邸宅に別殿を建て、彼女を住まわせ、戦時以外の時はたとえ家人や部下、天良家の世話役であっても立ち入れさせなかったという。
 後世にて、この殿の柱には、天良舞当人が彫ったと思われる皮肉な歌が残されている。
 
「天の女(め)の 心も知らず あはれなり 月姫の衣に にほひさえなし」
(彼の人はこんなもので天の女を囚えたつもりでいるのだろうか。可哀想な方。月の姫(かぐや姫)の衣には、恋しいと感じる人の匂いさえなかったというのに)
 
 その他にも結納後に書かれたとされる直筆の日記は焼かれずに遺されたが、その多くは夫に対する諦観と憂慮であり、彼女の夫婦仲はひどく一方的なものだったとされる。(以下、舞姫記一部抜粋)
 
「戦の穢れも落す間もなく、あの人は今日も殿を訪れた。物忌みに伏す、と伝え置いていたはずだが、聞き入れてはくれなかったようだ。子供のような新兵も、付き合いの旧い老兵も、此度の戦で失ったはずなのに、どうしてあの人は変わらずここを訪れるのだろう。せめて、彼等の四十九日が過ぎるまで清く居る心づもりはないのだろうか。天良の家にいた頃に会ったことがある殿方たちは、そのような風には見えなかったのに」
 
「亜衣姫様(久世家正室)のお具合がまた悪くなられた、と聞いた。家に仕える女官や官吏の中には、亜衣姫様が私への苦言を申していたと申告してくる者もいたが、亜衣姫様のご心境を考えると当然のことだ。私が頭を垂れて亜衣姫様が慰められるということもないだろう。昨晩も当主様には亜衣姫様を慮って通って差し上げるよう、申し上げたのに。これでは久世家の繁栄はおろか、久世家に要らぬ騒動を齎してしまう。一体、どうしたものか」
 
「庭師の方が亡くなられた。当主様が、私と話をしているのを見咎めて斬ったと聞かされた。最早、手段は選んでいられまい。暫しの間、庭師の血の付いた打掛を纏って過ごすこととした。藤一郎殿(久世家側近の一人。邸内の男で唯一、舞姫と接することを許されていたとされる)に願い出て、北の方で作られたと聞く薬を持って来て頂いた。これを呑むと、しばらくの間はややを孕まずに居られるらしい。これで当主様も目を覚ましてくださると良いのだが」
 
【伽羅軍との抗争】
 憂いた日々を送る舞姫の身に、決定的な厄災が降りかかったのは、天麗三十三年、初夏の頃だった。黒法師を名乗る伽羅軍の一団が、沙羅の領域へと踏み入り、抗争となった。舞姫は幻狐軍の将として、浅葉藤一郎を初めとする一軍を率いて参戦。先陣を切り、伽羅軍の周辺集落への進軍を防いだが、戦の最中で行方知れずとなった。抗争が集結して間もなく、久世家、天良家、共に捜索が行われたが、彼女の遺体が発見されることはなかった。
 
【華姫】
 行方知れずとなり、一年が経過した後、舞姫は公的に故人と記された。だが、抗争より二年が経過した後、天良家の門前に現れた女が金の髪と碧の目を持つ赤子を残して立ち去ったという逸話が残されている。女は辞世の句と思われる言の葉を残し、赤子と共に遺書のようなものを置いていったことから、舞姫当人ではないかという説が有力となった。
 しかし、赤子の歳から数えて久世の血を引く姫ではなく、また、赤子の言葉から伽羅軍による狼藉から産まれた子である可能性が高いとされ、当時の後宮ではそのまま流すとの案も挙がった。これに反したのは当主である天良華林であり、彼女を正式に天良の跡継ぎとして迎え入れた。
 
 去り際に舞姫が残した句には、その潔さとたとえ名花であろうとも散り往く定めのあはれが歌われている。
 
「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」 舞姫
(散る時を心得てこそ、花も人も美しい。散りゆく時こそ、人はかくも美しくなれるかもしれない)
 
 後の世に舞姫の娘である華姫が命を落とした戦に出向く以前、遺言として辞世の句を詠んでいるが、母に対する複雑な心境か、誰かに宛てた恋歌か、真逆とも言える句を残している。
 
「花と羽根 ひとしく命 ながからぬ 羽根と散るのを 思ひけるかな」 華姫
(季節によって散る花と生え変わっていく羽根と、等しく短い命であるならば、私は羽根となって散りたいと思うのです。(そう思うことは罪でしょうか))
 
 
 



(以下、沙羅・伽羅の抗争が終結した後、伽羅のとある民家より発見された日記と思われる記述)
「筆と紙が与えられたので、久方ぶりに字をしたためてみようと思う。
 この場所は長閑で故郷の山を思い出す。生活は楽とは言い難いけれど、山と川の恵みがあるおかげで何とかなっている。最初は大丈夫だ、と己に言い聞かせていたらしいあの方も、最近は随分と薪割りが板について来たようだ。汗を流した後で、狭いながらも風呂に浸かるのがこんなにも心地良いものだと知らなかった、と実に楽しそうに話していらっしゃった。採って来た木野子をとても難しそうなお顔で選別される姿は、何だか可愛らしくも見える。あの冷たい視線で動物たちを見下ろしていた方とは別人のようだ。
 でも分からない。何故、あの方は私を連れ出して、こんな僻地へと逃れて来たのだろう。国を裏切る行為だとあの方も知っているはずであるのに」
 
「受け入れてしまった。不義であることは知っていたはずなのに。あの方は大層、私を丁寧に扱ってくださった。許されることはないだろう。私も、あの方も。それなのに何故? その日以来、同じ夢を繰り返し見るようになった。赤い障子の向こうで、糸を紡ぎながら歌う女の夢。毎日、女の姿は違うのに、彼女たちは泣きながら同じ歌を歌うのだ。にくし、にくしや、こいのうた。くやし、くやしや、あいのうた。彼女たちは私に何を求めているのだろうか。
 いや、それよりも分からないことがある。不義を犯した。あの方は私の国の敵。なのに、何故、今、私はこのあの方と共に起床し、共に些末ながら飯を食らい、同じ褥に入る。この暮らしが延々と続けば良いと思っているのだろうか。そんなこと、ありはしないというのに。
 そういえば、長いこと月のものが来ていない。もしかすると……。もし、そうなら私たちに罪はあっても、腹のややには何の罪もない。あの方に相談してみようと思う。筋違いかもしれないが、何となく、あの方は喜んでくださるような気がするのだ。悩むところは多くあるはずなのに、何故か私も嬉しい。この感情は難だろうか」
 
 
 
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