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汝、鷹の爪を継がんとせし人ならば、真に刻んだ志を示せ。 汝、鷹の羽を宿さんとせし人ならば、誠に猛る理想を示せ。 証明せよ。汝、雛鳥に非ず。頂上たる蒼穹を翔べ。
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an evening calm

※リクエスト品セルカラR物。

 深夜2時間クオリティ注意。
 あんまりエロくならんかた。たぶん、R-15未満くらい。ただのセルリアの独白なんだか惚気なんだかよくわからない代物になった。

 仕事で、昔を思い出すような嫌なことがあったっぽい副隊長(24)。

 閨において、蓮は恐ろしく愛でまくるタイプ、アルティオは何だかんだでがっついちゃって「やっぱ猿か」って言われるタイプ、そしてセルリアは甘え上手の甘えさせ上手だと思っている。

 

 他人が思うより、俺は身勝手で頼りない性格なんだと思う。
 自覚があるだけマシ、って言葉があるが、自覚してるだけにタチが悪い、ってこともある。俺の場合は後者じゃなかろうか。
 何せ、自分の弱みを利用して、他人に甘える術を知ってしまっているからだ。
「あなた?」
「……ん」
 理性を沈めていた為に一拍、反応が遅れた。元々、情事の合間はあまり頭が働かない。というか、働かせていない。
 耳を欹てて、目を開いて、相手の反応に注意するなんて高等技術は、初めて彼女と身体を重ねるときに学んだ。性欲の発散で対価を得る商売女が相手だと、そんな配慮は要らなかったからだ。だが、処女を抱くとなるとそれなりの礼儀というものがある。惚れた腫れたの感情があるなら尚更のことだ。
 ……話が逸れた。
 限りなく獣に近い本能に鎖をかけて顔を上げる。弱々しい行燈の紅い灯りの中で、磨いたような翡翠色の瞳が二つきょとんと俺を眺めていた。
 旦那とはいえ男に押し倒されながらする表情じゃねぇだろう、と苦笑しながら身体を起こした。連れ添って5年。もうじき6年が経つが、彼女の天然はまったく変わらない。一番、最初はあまりの危機感の無さに苛立ちさえ覚えた。実際、身体で危険を悟ってもらおうか、と馬鹿なことを考えたくらいだ。
 それを考えると、俺は相当、丸くなったもんだ。いや、丸く、なのか?
 一向に変わらない裏表の無い態度は、出会う前にも後にも、知った男が俺だけだということだ。前に男が何人いた、なんて気にする女々しい性格になったつもりはないが、それでも多少の優越感を覚えてしまうのは性というものである。
 既に解けていた帯を直そうともせずに、起き上がって小動物みたいにこっちを見上げてくる。楽な単衣は当然のようにするりと肩から落ちて、豊満な胸に引っかかって止まった。寝所だから下着はつけていない。
 いやいやいや。俺はどこぞの上司のような鉄壁の理性は持ち合わせていない。どちらかというと、据え膳は冷める前に食っちまうタイプだ。
 予定より遅く帰った挙句に、寝込みに手を出しかけたのは俺が悪かった。悪かったから、そういう完全に罪のない目で見上げるのは勘弁してくれ。下手に責められるより、よっぽど罪悪感で死にたくなる。いや、死なないけどな。
 彼女は無垢な目で、訝しげに俺の目を覗き込んでくる。安眠を邪魔された不満ではないらしい……まあ、至極大切に深窓の令嬢として育てられた彼女は、他人に悪意を持つことは滅多にないのだが。
 小首を傾げて伸ばした華奢な手が、頬に触れた。
「どうかした?」
「……」
「顔色、良くないわ」
 ……あー、畜生。
 急に情けない気分になって、柔らかい身体を抱きしめた。顔を埋めた細い首筋からは、甘い汗と香の香り。少し鼻に残るってことは、何かの果物だろうか。前は女の付けてる香水なんて、本気でどうでも良かったんだけどな。
「あなた?」
「……」
 それでも無垢な声を出す彼女に、引き締めているはずの涙腺が緩んだ。
 情けないことだと悟っている。そして、限りなくどうしようもないと思う。こんなときに、過去に抱いた女はこんな優しい声をしてなかったなぁだとか、こんな風に背中を摩ってはくれなかったなぁだとか。比べるだなんて。
 最低なことをしている自覚はある。何しろ、その女たちは自棄になって人肌恋しくなった自分が、溜まったストレスの捌け口に買った女たちだ。いや、別に職業を貶めたいわけじゃあない。どうしようもない男の欲望を受け止められる女たちは、俺より遥かに高尚な人間だ。だが、彼女と比べるのは何かが違う。
「……ごめんな」
「?」
「少し……つらいんだ」
 そう言えば、拒否出来ないことを知っていて、俺は彼女の耳に言葉を落とす。背中を摩っていた両手がひたり、と止まって、抱き締めるように結ばれた。
 我ながらずるい手だと自覚している。
 現実を考えたくないとき。過去から目を背けたいとき。犯した罪を見たくないとき。
 穢れを知らない手が、すべて受け止めてくれるのを知っていて、わざとそう囁く自分は、ひどく卑怯で矮小な生き物だ。
「……んっ」
 薄く汗を掻いた首筋から、耳元までを舌で撫で上げると、俄かに反応した腰が戦慄いた。そのまま白いマシュマロのような耳たぶを食んでいると、ぺしり、と背中を叩かれる。
 視線を走らせると、どこか不満げな目がこっちを睨んでいる。あ、怒らせたかもしれね。
「やっぱ駄目?」
「……駄目ではないけど」
「けど?」
 世渡りが身に付いた身体というのは、ろくなもんじゃあない。ろくなもんじゃあないが、こういうときには多少、役に立つ。
 腰を少し持ち上げながら。あくまで顔は低い位置から。なるたけ情を誘う目で。声のトーンは2つほど低く。
 計算高い性格じゃあないが、慣れれば人間、それくらいのことは自然と出来るようになる。
 何度もやってる手なんだが、お嬢様は気が付いているのかいないのか。頬が真っ赤に染まる様は、相変わらず鈍感でかわいい。
「……今日、まだしてないわ」
「何を?」
「……」
 あ、やべ、暴れる。と思った瞬間に手足に力が入ったので、軽く力を入れて抑えつけた。御所勤めの女官は雅な見た目よりも遥かに重労働らしいが、それでも軍人として鍛え続けて来た男から見れば可愛いものである。
 不貞腐れて、本当にさせてもらえなくなる前に、化粧を落としたピンク色の唇に触れるだけの口付けを落とす。
「……不満だった?」
 ようやく満足げに頷いてくれる彼女に、苦笑を一つ返す。愛されているというのは、かくも幸せなことだ。
 名残惜しく腰に残る帯を引き抜いて、自分より遥かに柔らかい身体に顔を埋めた頃には、機嫌なんてころりと直っていたわけだが。もう、ほんの少し、つらい振りをしていようか。
 
 他人が思うより、俺は身勝手で頼りない性格なんだと思う。
 自覚があるだけマシ、って言葉があるが、自覚してるだけにタチが悪い、ってこともある。俺の場合は後者である。
 何せ、自分の弱みを利用して、他人に甘える術を知ってしまっているからだ。
 
 どういう風にというと、こんな風に。
 なあ、狡い性格だろう?



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なんというジェバンニ

仕事早すぎます香月さん…なにこれ嬉しい///▽///
大抵日参している小春ですが、昨日は珍しくこちらを覗かなかったのです。
その間に素敵セルカラがうpされているだなんて…(´;ω;`)! 最高のご褒美です!

《他人が思うより、俺は身勝手で頼りない性格なんだと思う。
 自覚があるだけマシ、って言葉があるが、自覚してるだけにタチが悪い、ってこともある。俺の場合は後者である。》
とにかくコレにつきるお話でしたね。イケメン過ぎてまるで自分がお花畑に導かれたかのようにテンション爆発いたしました…(日本語でおk

セルったらイケメン過ぎて…/// さらっとした肉食系ですね。あああもうかっこいい…!
ファンクラブ入りたい。いや作りたい。
鷹の副隊長だいすきっす(`・ω・´)!!


アルティオの盛り具合(笑)
地味でも行動はイケメンは副隊長です(`・ω・´)

深夜2時間クオリティで書き上げました。
あんまりエロくならないですいません^^;

Sっぽいような、ただ狡賢いような、悪人にはならないけどちょっぴり狡い。肉食系だけどかぷう、といくよりじっくり味わうタイプ。
セルリア=ヴァージアはそんな男だと思います(笑)

鷹では一番年上だから、大人としてがんばるます! 地味だけど! 地味だけどっ!(大事なことなので2回(ry
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